倫理綱領
ボランティアコーディネーション力検定ならびに認定ボランティアコーディネーターシステムの導入と並行して、私たちが日々のコーディネーション業務において、専門職としての責任と自覚を持ち続けるための礎をつくるとともに、業務において、ともに守り、努めるべき要素を明文化することで、専門職としての存在と考え方を社会にアピールするためにボランティアコーディネーター倫理綱領を作成しました。
基本的な考え方
ボランティアコーディネーター独自の価値については、ボランティアコーディネーターが市民社会の創造をめざして人々の参加と協働を促す専門職であることを明確に謳い、ボランティアコーディネーション力検定のテキストなどに収めた定義などをふまえて作成した。また、ボランティアコーディネーターが、人と人、人と組織をつなぐ支援をしていること、またその業務においては高い人権意識と専門性を必要とする職種であるという観点から、対人援助にかかわる仕事を社会的な役割として担っている専門職能団体の倫理綱領に共感し、参考にした。また、海外についてはVolunteer AdministratorのEthicsを参考にしている。
作成までの経過
2009年 | 8月 | 運営委員会において倫理綱領作成とチームの結成が提案され、決定 |
9月 | 運営委員会に作成方法とスケジュールが提案され、意見交換 | |
10月 | 運営委員会に倫理綱領のコンテンツと文案が提案され、意見交換 | |
12月 | 運営委員会・理事会において修正された「第一次案」を審議 | |
2010年 | 1月 | 運営委員会・理事会において上記第一次案とともに「作成のプロセス」を資料として作成することに決定 |
3月 | 2010年度会員通常総会において「第一次案」「作成のプロセス」を提案し、意見交換 ⇒ここでの意見を「ボランティアコーディネーター倫理綱領作成チーム」にもどし、さらなる検討へ。 |
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4月~12月 | 運営委員会、理事会、および会員メーリングリストなどを通じて意見交換をつみあげ、「ボランティアコーディネーター倫理綱領(修正案)」を作成。 | |
2011年 | 1月~2月 | 運営委員会・理事会において修正案を審議。ボランティアコーディネーターの専門職としての独自性とは何か、ボランティアコーディネーターが大切にすべき価値、倫理などに固有の要素が不十分であるとの理由から、再検討することになる。 |
7月 | 運営委員会合宿において、今後の進め方を検討。⇒作成チームを再編成 | |
9月~12月 | チームにおいてボランティアコーディネーターの独自性を明確にした倫理綱領作成を再検討、「第2次案」を作成。2012年 | |
2012年 |
1月 | 運営委員会において「第2次案」を審議し、さらに修正した案を2月の理事会で審議し確定した。 |
3月 | 2012年度会員通常総会において提案、承認される。 |
ボランティアコーディネーター倫理綱領
前文
ボランティアコーディネーターは、市民一人ひとりの可能性を信じ、その参加と協働によって形作られる市民社会の実現をめざす。そのために、あらゆる人びとの主体的な参加を促し、多様な人や組織が協働することで生み出される力によって、社会が直面するさまざまな課題を解決し、持続可能な社会を築いていくことを促進する。
われわれはこの倫理綱領を拠り所とし、専門職としての自覚と責任を持って自らの行動を律し、研鑽に励み、職務のより一層の充実のためにあらゆる努力を払うものである。
第1章 ボランティアコーディネーターの定義
ボランティアコーディネーターは、ボランティアコーディネーション機能を業務として担う専門職である。「一人ひとりが社会を構成する重要な一員であることを自覚し、主体的・自発的に社会のさまざまな課題やテーマに取り組む」というボランティア活動の意義を認め、その活動のプロセスで多様な人や組織が対等な関係でつながり、新たな力を生み出せるように調整することにより、一人ひとりが市民社会づくりに参加することを可能にする役割を担う。
第2章 価 値
2-1 個人の尊重
ボランティアコーディネーターは、すべての人間をかけがえのない存在として捉え、一人ひとりの個性や意志を尊重する。
2-2 ボランタリズム
ボランティアコーディネーターは、市民が自らの自由意志にもとづき自発的に行動することの社会的価値を認め、尊重する。
2-3 参加の力
ボランティアコーディネーターは、市民が社会の課題に対して、自らが社会づくりの当事者であることに気づいて主体的に参加することを大切にする。
2-4 多様性の尊重
ボランティアコーディネーターは、社会が多様な人や文化で成り立っていることを受容し、個人や集団の間に存在するさまざまな違いを受け止めて活かす。
2-5 協働の促進
ボランティアコーディネーターは、異なる主体が課題を共有し、対話を通じて共感を生み出し、共に考え行動を起こしていく協働の場づくりを促進する。
2-6 社会的公正
ボランティアコーディネーターは、平和で差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などのない、自由、平等、共生にもとづく公正な社会の実現に貢献する。
2-7 創造と変革
ボランティアコーディネーターは、市民によるボランタリーな活動が社会的に意義のある新たな価値を生み出すことによって、そのことが組織や社会制度のよりよい変革につながるように推進する。
第3章 倫理基準
3-1 利益の尊重
ボランティアコーディネーターは、業務の遂行に際して、常にボランティアとボランティアを求める人・組織のそれぞれの利益を尊重し、特定の個人、集団に有利、或いは、不利になるような行為をしない。
3-2 秘密の保持
ボランティアコーディネーターは、ボランティアとボランティアを求める人・組織、及びその関係者から情報を得る場合、業務上必要な範囲にとどめ、その秘密を保持する。秘密の保持は業務を退いた後も同様とする。
3-3 個人情報保護
ボランティアコーディネーターは、その業務を通じて知り得た個人情報を本人の同意のうえで活用することとし、漏洩することのないよう、その取り扱いには最大限の注意を払う。
3-4 説明責任
ボランティアコーディネーターは、すべての関係者に対し、必要な情報を適切な方法・わかりやすい表現により提供する説明責任を果たす。
3-5 権利擁護
ボランティアコーディネーターは、ボランティアの権利、ボランティアを求める人・組織の権利、自らの属する組織の権利のいずれも侵害されることのないよう、その擁護に努める。
3-6 倫理上のジレンマ
ボランティアコーディネーターは、実際のコーディネーション場面において倫理的なジレンマが生じたときには、本倫理綱領に立ち返り、最適な選択や判断をくだせるよう関係者に働きかけ調整する。
第4章 専門職としての社会的認知と信頼の確立
ボランティアコーディネーターは、その業務の遂行において、専門性を発揮し最良の実践を行うよう努め、専門職としての社会的認知を得ることに寄与する。さらに、常に専門性向上のために研鑽を積み、社会的信頼を確立できるように行動する。
2012年3月4日
特定非営利活動法人日本ボランティアコーディネーター協会