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東日本大震災復興支援

東日本大震災5年、私たちのメッセージ

東日本大震災発生から5年が経ちました。
 亡くなられた15,894人の方々、今なお行方不明となっておられる2,562人の方々、そして、地震と津波の被害、さらには東京電力福島第一原子力発電所事故により、長期の避難生活を余儀なくされている約178,000人の方々に、心からお見舞い申し上げます。

 さて、今回の震災においても、多くのボランティアが東北へ出向き、あるいは自身の地元で様々な災害救援・復興支援の活動を行いました。その数は、たとえば赤い羽根「災害ボランティア・NPO活動サポート募金(ボラサポ)」の助成を受けて活動したボランティアだけでも550万人にのぼります。こうしたボランティアによる一つひとつの作業や企画、また被災された方々との交流や協働は、本当に大きな力となりました。

 振りかえってみますと、災害とボランティアが切り離せないものとなったのは、阪神・淡路大震災(1995年)以降のことでした。同時に、「災害ボランティアセンター」、そして「ボランティアコーディネーター」の必要性が広く意識されるようになったのも、この頃からでした。
 日本ボランティアコーディネーター協会(JVCA)の発足は2001年ですが、その起点となった全国ボランティアコーディネーター研究集会(JVCC)は1994年10月に最初の大会が開かれており、その当時から一貫して「ボランティアコーディネーション」の重要性を訴えてきました。
 その後、地震や水害などの大規模災害が発生した際には、当たり前のように災害ボランティアセンターが開設され、ボランティアコーディネーションが行われるようになりました。混乱を極める災害時においても、コーディネーターの対応のあり方で活動の質が大きく変わるという例が、各地で見られました。ボランティアの自発性や意欲に影響しただけでなく、被災された方にとっても、細やかな配慮がボランティアによりなされることにつながりました。その一方で、残念ながら、その役割は“集まったたくさんのボランティアを効率よく活動現場へつなぐこと”と矮小化されて理解され、ボランティアコーディネーターは、ボランティア受付、ニーズとのマッチング、送り出しなどの一連の流れをよりスムーズに進める担当者のように誤解されている場合もありました。

 元来、ボランティアコーディネーターは市民が社会的な活動に参加することを促進し支える専門スタッフです。ボランティア一人ひとりの自発性・主体性を大切にし、さらにそれを高めるような働きかけを行うこと、同時に、被災された一人ひとりの暮らしやニーズを大切にし、両者のよりより出会い、理解、共感を紡いでいく役割を担う存在です。
 災害時で言えば、被災地などに作られる災害ボランティアセンターや生活拠点などで、被災者の思いや要望や困りごとなどを丁寧に聴き取り、本当に必要としているニーズを掘り起こし、ボランティア活動希望者に正確に伝え、被災者支援の活動に結びつけるという役割を果たします。その際にニーズに対応する活動を新たに企画したり、ボランティア自身が活動を生み出していけるようにエンパワメントしたりします。また、被災地の外でのコーディネーターの役割としては、組織やネットワークに所属し、その組織のメンバーやボランティア志願者に対し被災地支援に必要な情報や活動の心得を説明して被災地に送り出すとともに、被災地のニーズを踏まえた後方支援の活動を担います。
 たとえば、「早く物資を送りたい」と連絡してきた人に、「今、現地では物資は受け付けていません」とただ断るのか、現地の状況を丁寧に伝えた上で、物資送付が現地の負担になることやそれ以外の支援の方法があることを説明して納得してもらうのかでは、その後の市民の参加意欲や行動に大きな違いが出てくるでしょう。同様に、被災地から離れた地域から出発するボランティアバス内で、丁寧なオリエンテーションを行い、活動の振り返りや思いのわかち合いを行うことで、参加者のその後に大きな変化をもたらすことができます。

 なお、上述した「ボラサポ」では、ボランティアコーディネーターの人件費に対する助成が可能となりました。これは共同募金会が人件費への助成を認めた初めての例で、まさに画期的なことでした。この背景として、私たちJVCAがボランティアコーディネーターの重要性を発信し続けてきたこと、そして「ボランティアコーディネーション力検定」の仕組みを開発してきたことが評価されたということがありました。

 JVCAは、震災後、主に福島県で仮設住宅等の住民を支える生活支援相談員の研修事業などを行ってきました。様々な背景の住民同士や多様なNPO等のつながりと協働をサポートする生活支援相談員にボランティアコーディネーション力は不可欠だからです。このように、「ボランティアコーディネーター」という名称はなくとも、ボランティアコーディネーション力を必要とする仕事や役割は拡大しています。
 災害から5年を迎え、被災地や避難先ではますます「市民」の力をどう引き出すか、そして多様な人や組織における本当に意味での協働が問われているように感じます。JVCAとして、今後ますますボランティアコーディネーターの本来の役割が理解されるように、様々な機会を通して発信していきます。また、こうしたボランティアコーディネーション力を身につけた人材が増えていくように、検定や研修等をますます充実させていきます。
 多くの市民の参加の力で、様々な課題に取り組み、問題解決につなげられる社会づくりを進めていきたいと思います。 

2016年3月11日

       東日本大震災で出会った多くの方々に想いを馳せて・・・

             認定特定非営利活動法人 日本ボランティアコーディネーター協会

代表理事  筒井 のり子