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検定システムについて

ボランティアコーディネーション力検定が目指すもの

特定非営利活動法人
日本ボランティアコーディネーター協会

ボランティアコーディネーション力検定&ボランティアコーディネーター認定システム

システム化検討委員会 委員長 筒井のり子


2009年8月29日、日本で初の「ボランティアコーディネーション力検定」が実施されました。派手なPRはしなかったにもかかわらず、第1回目の検定直前研修・試験には、165人という定員を大幅に上回る方々が受験され、145人の「ボランティアコーディネーション力検定3級」合格者が誕生しました。

第1回検定の合格率は、87.3%。そもそも「3級」は“落とすため”の試験ではなく、テキスト講読や直前研修の受講を通して「ボランティア」や「ボランティアコーディネーション」についての視点や知識を共有したい、と考えていましたので、ほぼねらい通りの結果となりました。

11月に実施予定の第4回(福岡)はすでに定員超過、12月に実施予定の第5回(神奈川・大阪)にも、続々と申し込みが届いています。(10月実施の第2・3回は、直前研修免除者のみ対象)

さて、この検定を企画・実施している、私ども日本ボランティアコーディネーター協会(以下、JVCA)では、「ボランティアコーディネーション力」アップを図るために、こうした“検定”という形がふさわしいのかどうか、当初は悩みながら検討を重ねてきました。多様な分野の機関やNPOのスタッフや研究者との研究会、「全国ボランティアコーディネーター研究集会」(年1回開催、約200~300人規模)参加者からの意見聴取、JVCA会員による討議など、約2年間の検討期間を経て、実施に至りました。

ここで、あらためて「検定」という形を取るに至った経緯と、「ボランティアコーディネーション力検定」の目指すもの、そのもたらす意味について整理しておきたいと思います。

1.なぜ、ボランティアコーディネーション力検定か

JVCAは、市民が主体的に社会の課題解決に取り組む市民社会の実現を願い、そのために重要な存在であるボランティアコーディネーターの専門性を確立し、社会的な認知を得ていくことを目的に、2001年に設立されました。具体的には、(1)多様な分野で活動するボランティアコーディネーターのネットワークづくり、(2)ボランティアコーディネーターの専門性の向上、(3)ボランティアコーディネーターの社会的認知の促進、の3つを目標に掲げています。

設立5年後に、これらの目標がどの程度達成されているのかを振り返る作業を行った結果、以下のことが明らかになりました。

(1)については、主催講座や研究集会へ多様な分野からの参加が増え、また各地で開催される「CoCoサロン」でも、分野を超えたネットワークが広がりつつあること

(2)については、分野や立場を超えたボランティアコーディネーターの共通基盤「ボランティアコーディネーター基本指針~求められる価値と果たすべき役割」をまとめたこと、また、各種研修、全国レベルの研究集会の開催、「ボランティアコーディネーター白書」の編集などで、一定の成果をあげていること

(3)については、残念ながら「専門職としての認知や配置」は進んでおらず、むしろ、社会情勢の影響もあって正職(正規雇用)化は後退しているという現実があること

そこで、専門職として「ボランティアコーディネーター」の存在の必要性を広く理解してもらうために、もっと社会的インパクトのあるものを打ち出していく必要があるのではないかということが確認されました。

そして考えられたのが、「認定ボランティアコーディネーター」の仕組みです。これは、職場のトップや上司から、「ボランティアコーディネーターは専門性がいる仕事なのだ」ということを認識してもらうこと、そして専門職として採用しようとする際に、「これだけの専門性と実力のある人だ」ということ客観的に示せるように、と考えたものです。(★「認定ボランティアコーディネーター」は2013年度からスタート)

しかし、これだけでは不十分です。そもそも「ボランティアコーディネーション」という働きが、施設や団体、そして地域社会の中で重要であるということが広く理解されていなければなりません。また、「ボランティアコーディネーション」の考え方とスキルは、一部の専門職だけが身につければいいと言うものでもありません。

地域社会や住民組織、施設・団体、行政、企業を含めて多様な分野や場面で“市民参加”や“協働”が重要視されている今日、「ボランティア」の価値や「コーディネーション」「協働」の意味をきちんと理解する仲間を増やしたい、という思いがありました。「ボランティアコーディネーション力を身につけた市民や職業人が増え、その力を個々のフィールドで発揮してもらう」・・・こうした基盤なしに、「専門職のボランティアコーディネーター」だけが組織に配置されても、私たちがめざす市民社会は作れません。そこで生まれたのが「ボランティアコーディネーション力検定」です。

2.ボランティアコーディネーション力検定の特徴

「検定」と聞くと、単にクイズ的に知識の有無をチェックするタイプのものを思い浮かべ、「ボランティアコーディネーション」にはなじまないと感じる方もおられると思います。実際、「検定よりも、研修を充実させる方がいいのではないか」という声もありました。しかし、自分が「ボランティアコーディネーション」に関わっているという意識をもっていない方や、十分わかっていると思っている人は、「ボランティアコーディネーター研修」は受講してくれません。「検定」という仕組みを活用することによって、これまでの研修対象として浮かびあがってこなかった人々の関心を喚起したいと思いました。

「検定」には、「一定の基準に照らして検査し、合格・不合格・価値・資格等を決定すること」(広辞苑)という意味があります。「ボランティアコーディネーション力検定」は、単に知識の有無をチェックするものではなく、むしろ「なぜボランティアが社会にとって必要なのか」「何のためにコーディネートするのか」といった“価値”に関わる部分を重視しています。

そのため、以下の3つの特徴をもっています。

(1)公式テキストを作成(多様な分野のメンバーによって、様々な角度から意見交換を重ねて作成)

JVCA編 早瀬昇・筒井のり子著『市民社会の創造とボランティアコーディネーション』、筒井書房、2009年7月発行

(2)研修と試験をセットにする(ボランティアやコーディネーション、協働について視点を共有)

研修5時間、試験1時間。なるべく多くの人が参加しやすいように一日で両方受けられるように設定。

(3)合格率は、80~90%とする(“落とすため”の試験ではなく、すそ野を広げていく)

3.ボランティアコーディネーション力検定の意味

このように、「ボランティアコーディネーション力」を身につけた人のすそ野を広げることを目的に、「検定」という仕掛けを採用したわけですが、ここで、「ボランティアコーディネーション力」の意味について押さえておきたいと思います。(詳しくは、先に紹介したテキストをご覧下さい。)

JVCAでは、ボランティアコーディネーション力を「ボランティア活動を理解し意義を認め、その活動のプロセスで多様な人や組織が対等な関係でつながり、新たな力を生み出せるように調整することで、一人ひとりが市民社会づくりに参加することを可能にする力」としています。

こうした力は、ボランティアセンターや市民活動センターではもちろんのことですが、たとえば、身近な自治会活動や子ども会、老人クラブ、小地域福祉活動、多文化共生の取組みなどでも、今後ますます重要になるでしょう。また、様々なテーマに取り組むNPO、さらに学校、博物館、福祉施設、病院、文化ホール、公園などの公共施設でも、「市民参加」や「協働」は不可欠のものとなってきています。自治体(行政)にとっても、施策づくりや大規模イベントなどへの市民の「参加」や「協働」をより適切に進めることは、喫緊の課題です。さらに、企業もCSRや社会貢献の一環として、あるいは指定管理者になった場合、「ボランティア」支援や「コーディネーション」の実践が必要となっています。

では、これら多様な立場や分野で活動(仕事)をする人々に、より多く「ボランティアコーディネーション力検定」を受けていただくことで、私たちの社会にどのような風を起こせるのでしょうか。

JVCAでは、以下の3つの効果を期待しています。

1)市民活動潜在層(無関心、未参加者)を巻き込む力に

メンバーの固定化、それに伴う高齢化、役員のなり手不足など、地域活動や多様な市民活動の現場でよく耳にする課題です。また、いろいろな調査結果で明らかになっているように、ボランティア活動への参加意欲に比して、実際に活動経験がある人の割合が低いのが現状です。 ボランティアコーディネーション力を身につけた人があちこちに増えれば、多様な人が参加しやすいよう仕掛けやちょっとした工夫、また相手のニーズに沿った対応が広がり、結果として、市民活動への参加者が増えていくことが期待できます。

2)社会関係の創出のために

増加する一方の虐待、孤独死、自殺などの背景にある癒し難い孤立感や閉塞感を思うと、今、“つながり”やその中で生まれる“総合力”は、現代社会が渇望しているものといえるでしょう。こうした「信頼に基づいた社会関係」(ソーシャルキャピタル)を創出していく実践的な力が、この時代にますます重要になっています。

ボランティアコーディネーション力は、まさに、「人と人」「人と組織」「組織と組織」「セクターとセクター」の間に、新たなつながりを生み出していく力となります。人々を何かの道具にしたり手段化したりするのではなく、一人ひとりの存在の重さを理解し合い、つながり合うことの実践が広がっていくことが期待できます。

3)市民参加と協働のための基盤づくりへ

「ボランティアと職員との関係がうまくいかない」「行政職員とNPO関係者で会議をしても、感覚や意識のズレが大きい」「同じボランティア同士なのに、福祉、環境、国際交流など、分野の違いがあると、うまくつながれない」・・・といった声は、いたるところで聞かれます。

その背景の一つに、同じ言葉(用語)を使っていても、それぞれでイメージするものや理解していることに違いがあるということが言えるのではないでしょうか。

「ボランティア」「市民参加」「コーディネーション」「協働」「市民社会」・・・これらの言葉が持つ意味や本質について、異なる団体やスタッフの間で、互いにゆるやかに共通するイメージをもっておれば、よりスムーズに、そしてより建設的に議論をスタートさせ、プログラム開発や事業展開ができるのではないでしょうか。

ボランティアコーディネーション力を身につけた人が多様な分野、組織に増えることは、協働のための基盤づくりにつながると思われます。

以上のように、JVCAでは、ボランティアコーディネーション力検定は、単なる個人の知識チェックのためのものではなく、新たな社会を創り出していくためのものと捉えています。

より多くの方が、ボランティアコーディネーション力検定に参加されることを願っています。

(2009年11月)