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基本指針

自然環境を守り命を受け継ぐことのできる持続可能な社会

○わたしのメッセージ その10○

 「命の大切さ」とはなんでしょうか。人が最も大きな衝撃をもって命の意味を考えるのは身近な人の死によってです。それが悲しみや虚しさやつらさです。この意味で、大切な命は、自分の命そのものというより身近な者の命です。したがって、命を大切にするということは、お互いがお互いの存在を大切だと思う関係によって成り立ちます。この結果として自分の命も尊重されます。
  反対に互いの存在を認めず、否定する関係は、命を軽んずることになります。戦争はその最たるものです。命の大切さとは、他者の存在を認めること、人々が出会い、より良い関係をつくりだすことからはじまります。ただしこれは、人間の「命の大切さ」の話です。
  さらに、自然環境を守る「地球にやさしい持続可能な生活」が大切だといいます。しかし、地球の人口は生態系に大きな影響をおよぼす規模になっています。人間が一つの種として、他の生物と対等に種を維持していくことができる人口は、500万人ぐらいといわれます。では「地球に」ではなく、「人間にやさしい持続可能な生活」をと考えても、生きていけるのは、現在の人口の6分の1ぐらいだといわれます。環境問題を考えるとき、私たちは「やさしい」などことばのイメージに惑わされ、簡単に答えのだせない課題について、考えることをやめてしまっていないでしょうか。
  人間の命だけでなく、すべての命はかけがえのない大切なものだといいます。しかし、その命を生みだしたのは宇宙の物質とその営みです。命の起源と環境の意味を問いつづけることのできる、人と人の関係を紡ぐ社会を築いていきたいものです。

池田 幸也
常磐大学教授